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遠点と近点

「調節」という単語には、
一般的に用いられる「control」の意味合いと、
眼のピント合わせ能力である「accommodation」の意味があり、
混在してややこしいですので注釈をつけておきます。

■ 遠点

前章までで、屈折異常と調節(accommodation)不全の解説をしてまいりましたが、
見方を変えますと、屈折異常というものは「遠点」という言葉でも説明できます。

メガネは、視力を矯正する道具でありますが、
ピントの合う距離を調節(control)するものでもあります。
ピントの合う距離を調節(control)した結果として、 所定の距離で得られる視力が変わるものです。

目には、ピントの合う最も遠い点があり、これを「遠点」と言います。
無調節状態(静的屈折状態)において、網膜上に結像する最も遠い点 ということになります。

正視のかたは遠点が無限遠にあり、近視のかたは眼前の有限の距離にあります。

遠視の方は、理論としては目の後方に焦点があるとされるのですが、
後ろは見ることができないために遠点は存在しないということになります。
現実的には、ピントが合っていなくてもそれなりに見えるので、 「見えない」わけではありません。

近視のかたのメガネは、遠点を無限遠かその近くに、
遠視のかたのメガネは、遠点を無限遠に置くものと言い換えることができます。

■ 近点

同じく、目にはピントの合う最も近い点があり、これを「近点」と言います。
調節(accommodation)を最大限に働かせて(動的屈折状態)、網膜上に結像する最も近い点ということになります。

調節(accommodation)する力の低下により、目的の距離でピント合わせができない状態が老眼です。
老眼鏡を用いて、目的の距離でピントが合うようにします。

■ 明視域

遠点から近点までの間を明視域と言います。


上図のように、「1.00Dの近視で、1.50Dの調節力のある眼」の場合、
焦点距離は、屈折度数の逆数になるので、遠点は( 1/1=1m=100cm )です。
最大限に調節(accommodation)すれば、近点は( 1/2.5=0.4m=40cm )になります。
この40cmから1mまでの距離が明視域となるわけです。

繰り返しますが、あくまでも正確にピントが合う距離であって、
遠点以遠、近点以近は見えないわけではなく、
離れれば離れるほどボヤける量が増えるということです。

調節力が充分にあるときは、メガネレンズによって遠点の位置を無限遠か、
それに近いところに置いておけば、近くは調節(accommodation)を働かせて見ることができます。

調節(accommodation)する力が弱くなったら、近い距離のものにピント合わせが出来なくなります。
すなわち老眼の状態ですが、 メガネレンズによって、
近点の位置を適切に調節(control)することで近くにピント合わせをすることができます。
と同時に、遠点の位置も眼前の近くに設定されてしまいますので、 老眼鏡を掛けると遠くは見えなくなります。
この時の遠点の位置は、眼前に置いたレンズの度数の逆数の距離(m)です。

つまり、調節力が低下すると、明視域が狭くなってしまうということです。
メガネの度数は、矯正視力はもちろんですが、それ以上にこの明視域を重視して決定する必要があります。


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