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近視の進行予防について
■低矯正眼鏡は近視の進行を抑制するのか?
1965年に、著名な眼科医である 所 敬(ところ たかし)先生が、低矯正眼鏡は近視を抑制すると報告されました。おそらく、日本ではそれ以来、近視の眼鏡矯正に関しては弱め(低矯正)が良しとされてきました。
当時は、今ほど近視の原因などがわかっておらず、長時間の近見作業による調節の持続緊張が、何らかの形で、眼軸の伸長に繋がるという説は、何となく理にかなっているように思われたのは容易に想像できます、
しかし、2002年のChung氏、2006年のAdler氏による
完全矯正値(過不足なく矯正する)VS低矯正値(弱く矯正する)のランダムトライアルなどで、
完全矯正のほうが近視進行が遅い、という、むしろ低矯正は逆効果という結果が出てしまいました。
その論文がこちらです。
Kahmeng Chung(2002)
Undercorrection of myopia enhances rather than inhibits myopia progression
「近視の低矯正は近視の進行を阻害するのではなく増強する」と訳せば良いでしょうか。
Daniel Adler BOptom Michel Millodot OD PhD(2006)
The possible effect of undercorrection on myopic progression in children
「子供の近視進行に対する低矯正の影響の可能性」
なお、日本眼科医会の2010年度調査報告では、複数の実験結果のメタ解析により、「低矯正眼鏡あるいは軽度近視を矯正しないことに近視進行の抑制効果は期待できない」とした上で、しかしながら従来は低矯正のほうが進行を抑制するという考えがあったことから、近視低矯正で処方するか完全矯正で処方するかについては、臨床現場では判断が分かれていると報告しています。
学校近視の現況に関する 2010 年度アンケート調査報告
■累進レンズで近視進行が抑制できるのか?
現在、近視の原因として考えられているものに、「調節ラグ」があります。
調節ラグとは、実際に必要な調節よりも少ない調節で済ませてしまうことで、遠視性デフォーカス(網膜後方へのピントのズレ)が起きるものです。
例えば、正視眼が眼前40cmのものを見る場合は、計算上では2.50ディオプトリーの調節が必要ですが、実際は、これを1.75ディオプトリーなどの調節で済ませてしまいます。
この場合の調節ラグは0.75ディオプトリーとなり、網膜の後方に結像することになります。
この遠視性デフォーカスが、眼軸の後方への伸長を促すというのが、調節ラグ説というわけです。
ヒトは生まれたときは遠視であることが多いのですが、 この遠視性デフォーカスを利用して眼軸を伸ばして正視化していくという理屈とも合致しますので、 調節ラグ説がすべてではないでしょうが、原因の一つだと考えるのは合理的に思えます。
ただし、調節ラグは誰にでもあります。
ちなみに、米国式21項目検査というオプトメトリーの手法の中に調節ラグの測定がありますが、その中で、モーガンによる調節ラグの期待値は、 単眼で1.00D±0.25D、両眼視下で0.50D±0.25Dと示されております。
つまり、近視の子にも、そうでない子にも、調節ラグは起こるわけで、近視の発生や進行には、別のファクターの関与もあると考えるのが自然です。(遺伝なども含めて)
累進レンズを使い、この調節ラグを減らすことで近視の進行抑制を計ろうとする臨床試験も複数行われています。
Jane E. Gwiazda(2011)
Progressive-Addition Lenses versus Single-Vision Lenses for Slowing Progression
of Myopia in Children with High Accommodative Lag and Near Esophoria
Desmond Cheng, George C Woo, Katrina L Schmid. (2011)
Bifocal lens control of myopic progression in children
Cheng D、Schmid KL、Woo GC、DrobeB。(2010)
Randomized Trial of Effect of Bifocal and Prismatic Bifocal Spectacles
on Myopic Progression
Satoshi Hasebe, Chiaki Nakatsuka, Ichiro Hamasaki and Hiroshi Ohtsuki.
(2005)
Downward deviation of progressive addition lenses in a myopia control trial
Jane Gwiazda, Leslie Hyman, Mohamed Hussein, Donald Everett, Thomas T.
Norton, Daniel Kurtz, M. Cristina Leske, Ruth Manny, Wendy Marsh-Tootle,
Mitch Scheiman, and the COMET Group (2003)
A Randomized Clinical Trial of Progressive Addition Lenses versus Single
Vision Lenses on the Progression of Myopia in Children
以上、5本紹介させていただきました。
結果はマチマチで、効果があったとする報告が2本、臨床的には優意な影響は無かったとするものが2本。
長谷部先生らの報告では、累進レンズが下にズレていたせいで効果が30%~60%低下したと考えられる、と、何ともズッコケた報告になっています。(調製した眼鏡技術者、ちゃんとせーよ!)
長谷部先生は、少ないながらも効果は見られたとされていますので、効果があったとするのは3本とカウントできるかもしれません。ただし、累進レンズにより抑制できる量は少ないので(年間0.14D)、臨床的に推奨はされないと報告されております。
■Myopia Control Lensは近視進行が抑制できるのか?
もうひとつ、近視の原因として着目されているものに、軸外収差による遠視性デフォーカスがあります。
眼は、中心部分を明視するために調節を働かせますが、その結果、周辺部分では網膜後方へのピントのズレが発生すると考えられております。
この周辺部での遠視性デフォーカスを改善するために同心円状にレンズの周辺に向かって屈折度数が弱くなっていく(プラス側に移行する)構造のものです。
Liu Y, Wildsoet CF. (2010)
The Effect of Two-Zone Concentric Bifocal Spectacle Lenses on Refractive
Error Development and Eye Growth in Young Chicks
Sankaridurg, Padmaja; Donovan, Leslie; Varnas, Saulius; Ho, Arthur; Chen,
Xiang; Martinez, Aldo; Fisher, Scott; Lin, Zhi; Smith, Earl L. III; Ge,
Jian; Holden, Brien.(2010)
Spectacle Lenses Designed to Reduce Progression of Myopia: 12-Month Results
海外の報告では一定の効果がみられたということですが、以下の通り、日本で行われた多施設共同研究では、効果を証明する結果は得られませんでした。
軸外収差による遠視性デフォーカスは、 調節ラグと同じく、近視の子にも、そうでない子にも起こっています。
やはり近視の発生や進行には、これらとは別のファクターの関与もあると考えるのが自然です。
●その他近視の抑制効果について
現在、近視進行に一定の抑制効果があるものとして、 オルソ-K、遠近両用コンタクトレンズ、低用量の硫酸アトロピンの点眼が知られております。ただし、長期的な副作用等の可能性も考えられ、現在も研究が進められております。
ご興味があれば、検索すれば、医学論文や、眼科医のHPなどで情報が得られると思います。
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