遠近両用メガネを作ろうかと考えているかたに
人は誰でも老眼になります。
正視や遠視のかたで42〜3歳、近視のかただともう少し遅いかもしれません。
初めての遠近両用を作る時には不安や抵抗感があるものと思います。
私は42歳の時だったと思いますが、遠近両用メガネを作りました。きっかけは、趣味の釣りの際、糸を結ぶことに不自由を覚えたからです。
もし、自分がメガネ屋という仕事をしていなければ、こんなに早い年齢で作らずもう少し我慢したことでしょう。
遠近両用メガネにしろ、単焦点の近用鏡にしろ、「老眼」ともなれば、普通はそれくらい抵抗があるもので、
近くのものが見えにくく、眼精疲労や肩こり等が
起こるギリギリまで辛抱される方がほとんどです。
どうにも我慢しきれなくなって、とうとうメガネを作る決心をした場合、多くの方は手元専用を作られます。
しかし、その時だけ掛けるメガネというものは意外に面倒な事も多く、
常に鞄や服のポケットに入れて持ち運ばなければなりませんし、
何かの場合、わざわざ取り出して掛けなければなりません。使い終わればまた仕舞わないといけません。
そこで初めてのかたこそ、遠近両用メガネをお勧めいたします。
ここでは、初めて遠近両用メガネを掛けられるかたから、
よくあるご質問を例に挙げて、不安や抵抗感を解決していくと同時に、
初めて遠近両用メガネを掛けられるかたへのヒントを書き綴ってみたいと思います。
作られる時のご参考になれば幸いです。
● 遠近両用メガネの経験者から「慣れにくい」等の忠告を受けた
手元用メガネの度数を測る場合、遠くの屈折度数を検査して、
そこにいくつかの度数を加えて手元用度数を決めます。
これを専門用語で「加入度」といいます。
遠近両用メガネが慣れにくいという理由はいくつかありますが、
慣れる・慣れないの決め手の一つとして、加入度の大きさが挙げられます。
一般的には年齢に比例していて、若い人ほど「加入度」は少なくて済み、年齢を重ねる程「加入度」は大きくなります。
遠方部分の度数と近方部分の度数との差が開くほど、度数の変化や収差が大きく、
違和感を憶えます。
また、「足元が不安定」「揺れを感じる」「視野が狭い」などの訴えも、
この「加入度」により大きく左右されます。
誰もが避けて通れない眼の老化現象です。
早くからメガネを掛けたからと言って、
老視の進行に影響する事はありません。
加入度数の弱い時に作られる遠近両用メガネは、
違和感が少なくて済み、慣れやすいものです。
弱い加入度数で慣れてしまえば、後で加入度数を上げても、違和感は少なく掛けられます。
● 遠近両用メガネは「見づらい」「使いにくい」って聞いたんだけど?
遠近両用レンズは、本来オートフォーカスの機能が備わった眼の失われた調節力を回復するものではありません。
レンズの場所によって度数を変え、視線の通る位置を変えることで、遠方だけではなく近方が見えるように作られたものです。
老眼になる以前とはまったく違った環境にならざるを得ません。
老眼になる以前の眼の使い方と比較してしまうと、遠近両用メガネは著しく不便と思われるでしょう。
しかし、嘆いたところで失われてしまった調節力は戻ることはありません。
現実を冷静に見つめれば、現在の環境を受け入れて、少しでも快適な視生活を送ることが出来るように順応するしかないのです。
私がよくお客様にお伝えする話に
「人生の半分近くは、老眼と仲良くしていかないといけません。
そのとき、遠近両用レンズを上手に使えるか否かで、生活の質がまったく違ってきます。」
というものがあります。
まず、
遠近両用メガネ(主に境目の無い累進レンズと呼ばれるもの)の不都合な点は、
主に
1.足元がボヤけて、浮き上がって見える
2.近くの視野が狭い
3.遠方視の際、視界の端がモヤモヤする
4.顔を動かすと視界が揺れる
という4点です。
反して、遠近両用メガネのメリットは、
「掛け外し無しで、遠くも近くも見える」の一言に尽きます。
このデメリットとメリットを天秤に乗っけて、
デメリットが上回れば遠近両用は使えないし、メリットが上回れば遠近両用を使えるようになるわけです。
眼科における眼鏡処方の現場で、患者さんが不具合を感じているのに関わらず、
「掛けて慣らしてください」「掛けてれば慣れる」と一方的に処方を押し付けられるような場面に出くわします。
(不具合を感じても、患者さん側が遠慮してしまい、言い出せないケースが多いものと推測します)
私も、特に遠近両用レンズを販売する際に、少々意味合いは異なりますが「慣れ」という言葉は使います。
その意味とは、「
お客様に慣れていただけるように、最大限の注意を払って、レンズ度数や銘柄の選定を行いますが、
お客様におかれましても、老眼になる以前の環境とは変わってしまったことを理解していただき、、ちょっとだけ譲歩してください。」
というものです。
とかく 遠近両用メガネのデメリットばかりが強調されて、
その素晴らしいメリットを感じ、享受していただくように、少しだけ努力していただければ、
きっと遠近両用メガネは、老眼と仲良く暮らしていく橋渡しになってくれることと存じます。
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