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立体視と深視力
立体視とは
深視力というのは、「奥行知覚」または「深径覚」と言いまして、つまりは、立体感や遠近感のことです。
右目と左目は離れた位置から立体視物を見ており、立体視物のある一点を選ぶと、この点は、網膜の非対応点に結像しています。この非対応度が立体視差です。
左右眼の立体視差を持つ網膜像が融像されて、立体視が生ずるわけですが、立体視は、両眼視機能における三次元の視的認識であり、融像機能の最も高次のものです。
小さな箱を少し傾けて、片側だけの側面が見えるように置いたとき、右目だけで見た見えかたと、左目だけで見た見えかたとは、側面の幅が違って見えます。
しかし、両眼で見ると、側面は1つしか見えず、はっきりと立体感が感じられます。
複視が起こる代わりに立体視が生まれるということは、複視と立体視の間に密接な関係があるということで、ある範囲までは対応のズレは立体視となり、それを超えると複視となります。
対応点からズレた位置に結像しているにも関わらず複視が起きずに1つに見えるように調整する視神経系統の制御機構を感覚神経性融像機能といいます。
この感覚神経性融像機能が働く範囲が、Panumの融像感覚圏と呼ばれるものです。
深視力が苦手なかたの中には、この感覚神経性融像機能に問題がある場合があります。
眼位の異常(斜位)があり、左右眼の対応点からのズレがPanumの融像感覚圏を超える場合に、Panumの融像感覚圏を拡げることで複視を起こさないように働くことがあり、ドイツ式のポラテスト・プリズム法では、これを「Panumの融像感覚圏の誤用」「感覚神経性変化」と呼びます。
Panumの融像感覚圏は、網膜の周辺部では広く鈍く、そして黄斑部中心窩(視力の最も良い部分)では狭くて鋭敏になります。周辺視野での複視は避け、中心窩では精密な立体視を得るためと考えられます。
この中心窩付近のPanumの融像感覚圏を拡げて感覚を鈍くしてしまうのが「Panumの融像感覚圏の誤用」「感覚神経性変化」です。
ドイツ式では、これを起こさないように、Panumの融像感覚圏に内在する固視ズレまで含めて、斜位の完全矯正を目指しています。
単眼視での立体感
単眼視の場合にも、立体感、遠近感はあります。
それは立体視差によるものでは無く、他の物との相互関係、遠近による大きさの差、影などを利用して得られるものです。
三桿計を使った深視力検査の場合、3本の桿の
・黒の密度が揃う(色が揃う)
・太さが揃う
・ピントが揃う
などの見えかたで判断する場合も、立体視差を使わない方法と言えます。
単眼視でも深視力検査には合格できる可能性はありますが、立体視差を用いる方法に比べると劣るものと思われます。
深視力が不良な場合
・1.眼疾患などにより片眼の矯正視力が極端に不良な場合
・2.斜視や弱視などにより両眼視機能が喪失している場合
・3.片眼ずつの視力は良好であっても、抑制がある場合
・4.不同視や不等像視がある場合(左右の矯正度数に大差がある場合)
・5.裸眼または使用中のメガネでの視力が不良の場合
・6.斜位などにより両眼視機能が低下している場合
・7.深視力検査に慣れていない場合
などが考えられます。
1~3までの場合には、残念ながら合格する確率はゼロではありませんが極めて低くなります。
4~6の場合は、適切なメガネやコンタクトレンズを装用することによって合格しやすくなります。
7の場合は、4~6が影響していることが多いですが、練習して三桿法の要領さえ分かれば合格できることが多いです。
斜視(しゃし)とは、片方の目は視線が正しく目標とする方向に向いているが、もう片方の目が内側や外側、あるいは上や下に向いている状態のことをいいます。
弱視(じゃくし)とは、目の障害の一つ。目の機能が弱く、物がよく見えない状態をいいます。
抑制(よくせい)とは、両眼で見ているつもりでも脳では一眼の視覚情報しか取り入れていない状態です。
斜位(しゃい)とは「神経の緊張で両眼の視線を目標に合わせている状態」をいう。斜視とは異なり、ものは一つに見え、視力低下もおこしません。正視であれ眼鏡を掛けている人であれ、斜位を矯正しなくても、視力には大した影響を与えません。視力としての目の異常を自覚しなくても、神経が絶えず緊張している状態です。
こちらも参考にご覧ください。
両眼視機能検査~視覚向上のための正確な屈折検査
ご注意
多くの方が両眼視機能を考慮した眼鏡や練習により深視力検査に合格できるようになるのは事実ですが、斜視や矯正視力の低下などにより両眼視機能を改善することができない場合があることもまた事実です。
必ずしもすべての方が深視力検査に合格できることをお約束するものではありません。
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